昔々、あるところにアリの一家がおりました。
夏の盛りをとうに過ぎ、冬支度のためにアリたちは少しでも多くのエサを巣の中にためようと、一生懸命働いておりました。
そんなある日、アリの巣の側に突然大きなエサ場が現れました。そのエサ場は透き通った緑色の屋根に覆われており、中には甘くて美味しいエサがたっぷり入っています。
アリ達は我先にとエサ場に群がりました。エサを奪い合うため喧嘩になり、怪我したアリも沢山いました。
「巣の近くにこんなエサ場が突然現れるなんておかしい。注意すべきだ」
などと言う、妙に悟った風のアリもいましたが、それを聞いた大半のアリは言うことを聞いて注意するどころか、返って怒り出しました。
「冬支度にはエサが必要なんだ。このエサを集めない奴は、巣から出て行け」
「このエサを集めない奴は馬鹿だ」
多くのアリの罵声の前に、悟った風のアリは沈黙しましたが、決してエサ場のエサを食べようとはしませんでした。
やがて巣の中は、エサ場のエサでいっぱいになりました。
「よし、冬支度は出来た。次は働きアリを増やすため、子供たちにもこのエサを食べさせよう」
アリたちは、幼虫にもエサを与え始めました。
その頃から、不思議なことが起こり始めました。昨日まで元気だった働きアリが、突然死にだしたのです。
最初の内、死ぬ数はごくわずかでしたので、誰も気にしませんでした。
「そんなことは、生きていれば有るものさ。何も心配することではない」
アリたちは口々に言いました。
しかし、突然死ぬアリは日に日に増えて行きました。明らかに異常なことが起こっているけれど、誰もその事実を認めようとはしませんでした。
アリたちは皆、薄々原因に気付いていましたが、気付かない振りを続けました。
そして、エサ場のエサを食べ続けたのです。
さて、このお話の結末がどうなるか。それは皆さんに考えてもらいましょう。
もしかすると皆さんは、このお話の結末を知っているかもしれませんね。
~教訓~
君子、豹変す