2022年10月26日水曜日

ガマガエルとオタマジャクシと鶴

  昔々、あるところにガマガエルとオタマジャクシたちがおりました。

 彼らが住む沼には、鶴が毎日やって来て、オタマジャクシを一匹一匹つまみ上げては、飲み込んでいました。

 そこである夜、オタマジャクシたちはガマガエルに相談に行きました。

「ガマガエルさん、鶴を追い払って下さい。でないと、私たちはみんな食べられてしまいます」

 可愛いオタマジャクシに頼まれて、ガマガエルは胸を張って答えました。

「俺様がグワーッと2回鳴けば、鶴はいなくなるだろう。俺様に任せろ」

 それを聞いて、オタマジャクシたちは喜びました。

「流石、ガマガエルさんはすごいなぁ」


 さて、次の日、太陽が昇るといつものように鶴がやって来ました。

 ガマガエルがグワーッと2回鳴いて威嚇しましたが、鶴は全く気にしない様子で、オタマジャクシをついばみ始めました。

 その夜、オタマジャクシたちは、またガマガエルのところに集まりました。

「ガマガエルさん、本当にグワーッと鳴くだけで、鶴はいなくなるんですか。」

 ガマガエルは憤慨して答えました。

「俺様がグワーッと鳴けば、必ず鶴はいなくなる。3回鳴けば、きっと大丈夫だ。俺様を疑う奴は噓つきだ。そんな奴は、そう、反グワだ」

 自信満々に断言したガマガエルを見て、オタマジャクシたちは渋々納得し、住処に帰って行きました。

 

 さて、また次の日、ガマガエルは3回どころか何回も鳴き続けましたが、鶴は楽しそうにオタマジャクシをついばみ続けました。そればかりか、ガマガエルは足を鶴につつかれて、大怪我をしてしまいました。

 その夜、ガマガエルの周りに集まったオタマジャクシは数える程でした。

 わずかに残ったオタマジャクシを前にして、ガマガエルは言いました。

「俺様が鳴き続けたおかげで、このくらいで済んだんだ」


~ 教訓 ~

 間違いを認めなければ、間違えたことにはならない・・はずがない。

 根拠の無い狂人を信じてはいけない。





2022年10月20日木曜日

カルト教祖と狂信者

  昔々、あるところに、カルト宗教の教祖と信者たちがおりました。

 ある年の夏、教祖は信者たちを集めて言いました。

「今年の12月1日に大津波が起こり、人類は滅びる」

 さあ、それを信じた信者たちは大変です。

「もうお終いだ。どうしよう」

「大変なことです。助けて、教祖様」

 口々に叫んでは、教祖に助けを求めました。

「安心しなさい。あなた達は助かります。私と一緒に暮らしなさい」

 教祖の落ち着いた優しい声を聞くと、信者たちは少し心が安らぎました。

「分かりました。全財産を売り払って、教祖様に捧げます」

 信者たちは教祖と一緒に暮らすこととなりました。


 瞬く間に月日は過ぎ、12月1日になりました。

 教祖の予言によると、今日は人類滅亡の日です。

 怯える信者たちは、いつしか教祖の周りに車座になって集まりました。

 しかし、正午を過ぎ、夕方になっても、何の異変もありません。

 ついに時計の針は夜12時を周り、何も起きないまま12月2日になりました。

 信者たちはざわざわと騒ぎ始め、最後に教祖の顔を見ました。

 落ち着かない信者たちの前で、教祖は立ち上がり、厳かな声で言い放ちました。

「私の祈りが通じ、危機は回避された」

 その言葉を聞いた信者たちは皆、晴れやかな声で叫びました。

「ありがとう、教祖様!」


 信者たちは、晴れて狂信者になったのです。


~ 教訓 ~

  自らの過ちを認められないと、認知的不協和に陥る。

  コロナで日本人が40万人死んだかな?

21世紀のアリとキリギリス

 わりと最近、あるところに、アリとキリギリスがおりました。

 アリとキリギリスは同じ会社に同期で入社し、年俸はどちらもお米300粒でした。

 アリは言いました。

「僕はバリバリ働いて給料を上げてもらい、いい暮らしをするんだ」

 キリギリスは言いました。

「僕は仕事も暮らしもそこそこでいいから、将来のために少しずつ投資するよ」

 それを聞いて、アリは言いました。

「投資だって?何を夢見ているんだい。地道に働くのが一番だよ」

 言われてキリギリスは黙っていましたが、気持ちは変わらないようでした。


 その後、アリは一生懸命に働き、給料が毎年1%ずつ増えていきました。

300

300.0×1.01=303.0

303.0×1.01≒306.0

306.0×1.01≒309.1

309.1×1.01≒312.2

        ・

        ・


 一方、キリギリスは歌ってばかりでろくに働かないため、全く給料が増えず暮らしも質素なままでした。しかし、毎月お米10粒ずつ年間120粒をインデックスファンドに投資し、年平均4%の配当も再投資して資産を増やしました。

120

120.0×1.04+120=244.8

244.8×1.04+120≒374.6

374.6×1.04+120≒509.6

509.6×1.04+120≒650.0

        ・

        ・


 40年後、アリは会社で昇進し、年俸はお米450粒ほどになっていました。

 アリの巣ローンは完済しましたが、老後が不安なため、まだ10年くらいは働く予定です。

「そうだ。キリギリスはどうしているだろう。まだ投資なんてものに夢を見ているんだろうか」

 アリはキリギリスを呼んで、聞きました。

「どうだね、キリギリス君。投資の方は上手くいっているかね」

「はい。それはもう」キリギリスが言うと、アリは「ふふん」と鼻をならして聞きました。

「でも、君もあと10年くらいは働くんだろう?」

 アリの馬鹿にしたような態度に、ニヤリと笑ってキリギリスは答えました。

「いやあ、俺は明日で仕事を辞めることにしたよ。資産はお米12000粒ほどになったし、配当だけでも年間お米450粒ほど入るんでね。毎日歌って暮らすさ」

 呆気に取られているアリの顔を尻目に、キリギリスはさっさと家に帰って行きました。


 その後、子々孫々まで、アリは一生懸命働いて暮らし、キリギリスは歌って遊んで暮らしましたとさ。


~教訓~

 資本収益率(r)>経済成長率(g)

 指数関数の恐ろしさ(複利編)

 平和が続くと、貧富の格差は広がる。

 ただし、このキリギリスと同じ事が出来る精神力の持ち主は、極わずかである。






2022年10月19日水曜日

庭師とバラ

  昔々、あるところに、庭師がおりました。

 庭師は、領主様が大切にしている沢山のバラを病気から守るため、毎日毎日一本一本調べては、病気になった黒い葉っぱを取り除いておりました。

 夏のある日、薬屋が庭師の家にやって来て言いました。

「あなたはずいぶんと働き者ですね。ですが、そんなに働いては、身が持ちませんよ。この薬を使ってはいかがでしょう。これを使えば、働かなくても1日あたり8割の病気を防げます。薬の効果は1ヶ月なので、旅行にだって行けますよ」

 これは素晴らしいと思った庭師は、その薬を買いました。

 試しに薬をバラに使ってみると、薬屋の言った通り丸1日経ってもほとんどのバラに病気の葉っぱは有りませんでした。

 やれやれこれで休めると思った庭師は、こっそりと旅行に出かけてしまいました。


 1カ月後、庭師が旅行から帰って来ると、領主様がカンカンに怒っていました。

 なんとバラは全て病気になり、わずかに残った葉っぱも真っ黒になっているではありませんか。

「庭師よ、これはどういうことだ。説明しなさい」領主様は言いました。

 庭師は薬屋に言われた通りの説明をしました。

「馬鹿な庭師よ」領主様は言いました。「1日あたり8割の病気を防いだところで、何の意味も無いのだ。試しに、0.8を30回掛け算してみなさい。それが1ヶ月経っても病気にならないバラの割合だ」

 庭師は計算機を取り出して、計算を始めました。

0.8×0.8=0.64

0.64×0.8=0.512

0.512×0.8=0.4096

        ・

        ・

 計算機を叩く庭師の顔がみるみると青ざめていきます。

 なんと、0.8を30回掛けてみるとその答えは、

0.001238・・・

 0.2%にも満たないではありませんか!

 これでは1カ月で全てのバラが病気になってしまうのも当然です。

「よいか、短い時間ある程度の効果があったとしても、長い時間が経てばそんな効果など無いに等しいのだ。これからは薬に頼らず、しっかりと働きなさい」

 その後、領主様の庭師が旅行に出かけることは、2度とありませんでしたとさ。


~ 教訓 ~

 勝つ確率がある程度あっても、勝ち続けることは出来ない。

 指数関数の怖さ(ギャンブル編)。

 マスクが感染症に対して実験では有効に見えて、社会において全く無効である理由。


 勝率50%の場合に、勝ち続けられる確率のグラフ。

 ビギナーズラックを長期的に期待するのは愚かである。